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[このページの位置] トップ  化学物質情報  第9回:複写機

第9回  複写機
複写機の体系について
【本体】
  一般的な複写機の本体は、パソコン本体とほぼ同じものに、スキャナー部と熱定着部が加わったものと考えていいと思います。パソコンの構成部品に係る色々な問題は後ほど別な機会で取り上げますのでここでは割愛します。

・熱定着ユニット
 熱定着ユニットは、機種によっても異なりますが、ヒートロールが高温になるため、さまざまな耐熱材料が用いられています。紙詰まりを起こしたときユニットに触れて火傷をしないためと内部温度保持の目的で、ヒートロールカバーには、静電植毛されてスエードのような感触になっていることがあります。この場合樹脂が熱せられますので、どのような樹脂でもそれなりのものは放出します。また樹脂には、耐熱性と難燃性を付与するものが添加されていると考えるのが普通です。ヒートロールはシリコーン樹脂やPTFE(テフロン)で覆われていますが、これらには、低分子量分が含まれ、また量は少ないと思いますが熱と圧力によって使用中に生成します。ヒートロールとトナーの剥離を良くするためにシリコーンオイルを塗布したり沁みださせたりしていますが、熱せられてトナーの成分とともに蒸散します。

・スキャナーユニット
 スキャナーユニットはアナログ式の光学像を直接感光ドラムに投影するタイプでは、照明光が強く、温度も上昇するために周囲の揮発性有機化合物を放散させる要因になっています。
 デジタル式では、A3スキャナーと同じで温度上昇は小さいと考えて良いと思います。

【プロセス材料】
 複写機本体ではなく、複写する過程で必要とされる材料にトナー、磁性キャリアがあります。
・トナー
 トナーの成分については、大手複写機メーカーのサイトで商品安全データシートを入手することはできます。しかし、含有するすべての物質が商品安全データシートに書かれているわけではありません。
 トナーには大きく分けてスチレン系(スチレンアクリル)とポリエステル系(重合法のばあいはポリエステル)があります。これらのトナーには、低分子量分が含まれており定着時に蒸散します。問題となるのは、帯電制御剤を使用している場合です。発癌性はクリアしていても、アレルギー性などについてテスト結果は不明です。
 ポリエステル系トナーでは、コアにワックス成分として石油ワックス(ロウソクと同じ系統のもの)を含有したものがあります。これは定着時に蒸散してきます。面に広がって表面積が大きいため、アルカン類を苦手とする人にはきついと思います。またこの溶融したワックスが、トナー成分を引き連れる働きもすることになると思います。

・磁性キャリア
 一成分磁性トナーを使用していない2成分系の機械は磁性キャリアを使用します。カラー機はこの方式です。キャリアコート剤には主にアクリル・フッ素系、スチレンアクリル系、シリコーン系とあります。これらにも帯電制御剤として働くものが添加される場合があります。トナーと激しく摩擦するため、キャリア表面には摩擦熱で溶融したトナーが付着することがあります。
【オゾン】
 動作時の特有の問題には、オゾン発生があります。最新の機種では帯電ユニットが接触型に改良されオゾンが発生しにくい構造になってきています。古い機種ではコロナ帯電ユニットが通常最低でも3つあり、カラー機ではさらに多いことがあります。また定着ユニットにも使用されていることがあります。帯電ユニット以外の構成部分からオゾンが発生する可能性も残されているのです。              
複写機から放散される物質・・・試験結果から
 複写機について、構成要素から放散されるであろう物質を予測してみても限界があります。そこで今回は、実際に稼動時に放散されている物質についての客観的なデータが必要と考え、試験を行いました。今回行った試験は、複写機を実験空間に置いた拡散方式(パッシブ法)による比較実験です。本来であれば、ある特定の物品から放散される物質を測定するには大型チャンバ方式によるのが正式な実験であり、今回の拡散方式ではやはり開始時と終了時の開閉時に他の薬品からの影響が多少出ていることは否めませんが、それでも顕著な違いが表れています。

分析結果表 単位はいずれもマイクログラム立方メートル μg/m
分析項目 ドラフト室(コピー機なし) ドラフト室(コピー機あり) 普通教室 指針値
ホルムアルデヒド 11 97 Tr(10未満) 100
トルエン Tr(10未満) 18 Tr(10未満) 260
キシレン Tr(10未満) Tr(10未満) Tr(10未満) 870
エチルベンゼン Tr(10未満) Tr(10未満) Tr(10未満) 3800
スチレン 不検出 不検出 不検出 220
※室内空気中濃度は、摂氏25度換算値。
※Trとは定量下限値、すなわちかっこ内に示す数値未満であることを示す。

 この結果から、指針値を超える濃度を示す項目はありませんでした。しかしながら、コピー機ありの結果で、コピー機なしの場合のホルムアルデヒドが9倍近くの値を示しています。この値は摂氏25度換算値ですが、実際の室温はそれより低く、測定時の室温がもし25度を超えていれば指針値を超えていた可能性もあります。以前の実験の拭き残しや開閉時の影響を考えてもこれは注目すべき値です。もちろん今回の一機種のみの、限られた項目の結果だけで結論づけることはできません。もっと多機種について、多項目の(有機リンや可塑剤などを含む)調査が望まれます。もし今後、有機リンや可塑剤についても調査できることがあればまた結果を報告したいと思います。
複写機とレーザープリンター
 複写機といってもトナーを使用しない複写機もあります。例えば複写機能を持ったファクシミリでインクで印刷するタイプのものです。プリンタのインクについては次回取り上げます。反対にプリンタでありながらトナータイプのものもあります。レーザープリンタがそれに当ります。
 レーザープリンタは、速くきれいに仕上がる分、一般的にはインク方式のものに比べるとランニングコストが高い、普通紙にしか印刷できない、などのデメリットがあります。そのデメリットに加えて、多くの複雑なユニットから構成されているために、様々な溶剤などが使用されており、揮発性有機化合物が放散される心配があります。
子どもたちのためにできること
 複写機は、学校においてはほぼ朝から晩まで電源を入れたままのところがほとんどではないでしょうか。予熱に時間がかかるため、休み時間に急いで複写したいときすぐに取れるように、というのがその理由だと思います。
 その前提で考えると、放散する物質を少なくするために、使用しないときは電源を切っておくということが、あまり現実的な対応ではないと言えます。電源を入れる時の方が放散が多い場合もあり、かえって頻繁に電源を入れることがよくない場合もあります。やはり現実的な対応としては、適切な換気ということになるでしょう。
 そこで、換気の方法ですが、汚染された空気が排出されやすいような吸気と排気の位置関係が重要になってきます。換気されにくい構造になっている印刷室なども見受けられます。複写機のことに限らず、常に機械換気設備を稼動できる環境が整備されていることが望ましいのです。      
資料提供・協力:「子どもの健康と環境を守る会」
試料分析:野外科学株式会社       
今回は複写機です。単に複写機といっても、多種多様なものがあります。それら全てについて一概に述べるのは不可能ではありますが、可能な限り切り分けて考えてみたいと思います。

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